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鏡には、上着を脱いだエコが映っている。

誰もいないトイレ。
物音がして振りかえる。
古くなった扉が、すきま風で揺れている。

ため息をつきながら、手元に視線を落とす。

水を張った流し台。
どう楽観的に評価しても、清潔とは言い難いその陶器の器で
エコはコートを洗っていた。
蛇口の隣には、惨事を物語るには充分に疲労した携帯電話が置いてある。
そしてそれは、濡れている。

いずれにせよ、ここを脱出しなければならない。
エコは、赤く染まった水が渦を巻いて流れ切るのを待った。
殺人を犯した人間が、血にまみれた手を洗う心境とはこのようなものだろうか。
などと考え、汚れを洗い落とした上着と携帯電話を握りしめ、再びホームに立った。
時計は120度を指していた。


ちらりと、先ほどうずくまった場所を見る。
何も変化がない。
駅員は、月にどれくらいの頻度でこういった事象に遭遇するのだろうか、などと申し訳ない気持ちを抱えながら想像した。
しかし、エコにはその場を去ることしかできない。

携帯を開く。
エコの帰りを待つ、同居人の名前が表示される。
携帯電話が機能していることに安堵し、通話ボタンを押した。



続く
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